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涙のパーソナルトレーニング

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2019年4月22日

それはいつもと同じ朝でした。スタジオの扉を開け、空気を入れ替えてからフロアの掃除をした。違うとしたらBGMです。毎日その日の気分に合わせたBGMを選びます。その日は天気が良かったのでJoao GilbertoやBaden Powellなどのブラジル音楽にした。1か月に渡るベルギー、ドイツでの指導修行から帰り約1か月。全く落ち着かなかった頭の中が少しずつ整理されてきました。そういう時、だいたい僕は1週間程寝込む。丸1日の休みなどほぼ無いのでやるべきことの隙間を使って寝込む。それができるのも私を理解してくれる家族の存在があるからです。兎も角その日は朝9時に最初のトレーニングセッションを迎え入れました。普段はハードに動く人だが、その日は2週間ぶりということもあり、近況確認をしてからトレーニングに入ることにしました。ひとつふたつ雑談をしてから、

①「体(筋肉、関節など)の感覚(張り、疲れなど)」

②「精神(気分、感情)の感覚(イメージ、描写)」

③「今日の自己課題」

を簡単に書いてもらった。どうやら右肩にだけ肩こりがあるとのこと。そして最近はトレーニングをやめずに継続することと飼っているメダカの癒しから精神的な安定を得られていることがわかった。最後に自己課題を確認したらこう返ってきました。

「可もなく不可もなく」

これはどういう意味なのだろうか?僕は直感的にそう思った。無視することもできたが、しなかった。彼女の中に何か言葉にできない「しがらみ」があるのではないか?僕はまずそう仮説を立ててみることにしました。

 

 

 

僕は尋ねた。

「可もなく不可もなくとは現状維持をするという意味ですか?」

彼女が言った。

「いいえ」

「職場で辞める人がいるんです」

「仕事はそれによりハードになりました」

「今回で初めてではなく今年に入って3人目です」

「だから今、自分の課題がよくわからない」

そのように彼女は近況を語ってくれました。そしてその状況がいかに彼女を疲弊させているかを教えてくれました。この類の問題は、トレーニングをしにわざわざ私のスタジオへ来てくれる同志の方々が比較的頻繁に抱える問題である。続けて彼女が言いました。

「私も9月に仕事を辞めます」

僕は聞いた。

「じゃあ少し気分も落ち着きそうですか?」

彼女は言った。

「いいえ」

「自分が辞めることにより仲間に迷惑がかかるのではないか」

「そう考えると自分の決断が正しいのかわからないです」

僕は確信した。

「そうか、この内側の葛藤が彼女にとっての言葉にできないしがらみなのか。」

 

 

 

良い指導者とはどんな指導者だろう?素晴らしい知識を分け与えてくれる指導者?絶大なパワーで周囲を牽引してくれる指導者?私の周りにはそんな素晴らしい指導者の方がたくさんいます。でも僕は思います。良い指導者の「形」など無いのかもしれません。導かれた人が事後的に感じることなのかもしれません。僕には特化した知識も、絶大なパワーもありません。しかし僕は「痛みを恐れないこと」ができます。痛みを恐れて本質を隠すことや、自分を殺して相手と接することが嫌いです。自分を尊重できなければ必ずいつか相手も尊重できなくなってしまうからです。ブラジルで僕は一度死にました。3人の強盗に襲われたのです。悲しい現実でした。

「ブラジルの人々はまずいコーヒーを飲んでいる」

「なぜなら良質な豆はほとんど海外へ輸出されてしまうからだ」

「我々はうまいコーヒーが飲みたくても飲めない現実に生きているんだよ」

「すぐそこに喜びはあるのに、その喜びには手が届かないんだ」

ある友人がそう教えてくれました。胸が張り裂けそうになりました。富を得る為に恵みを輸出しても金を得るのは一部の富裕層のみなのです。もっと多くの人にとってお金や喜びが必要なのです。その強盗団も10代の若者でした。手には銃を持っていました。お金を得るためです。その銃口が向けられた瞬間、僕は一度精神上死んだのです。

 

 

 

突然、車のクラクションが鳴りました。振り返ると回送バスがこちらへ突進してきたのです。そして僕は救われました。そのおかげで僕の精神は一度死にましたが肉体はまだ生きています。肉体が生き長らえた事の代償はあまりに大きすぎました。長い鬱を経験しました。僕にとって「精神の死」以上に恐いことはありません。長い闘いの末、自分を取り戻すことができました。それ以来ずっと考えています。「自分とは何だ?」「より良い在り方とは何だ?」

 

 

 

ふと気づくと彼女は泣いていました。僕は言いました。

「人は誰しも自分の気持ちに素直になりたいのだと思います。」

「それでも、誰かを思いやり、気づかう心が時にそれを邪魔します。」

「その葛藤が時には自分を抑圧し、想いを殺し、自分の首を絞めつけます。」

「あなたの人生はあなたにしか歩めません。」

「あなたの人生を歩んでください。あなたは優しい人だから。」

 

 

 

少し呼吸を整え、気持ちを落ち着かせた後、我々はトレーニングを開始しました。トレーニングを終えた後、僕はもう一度聞いてみました。

「1時間前の自分を振り返り、再度明日に向かって何かできる課題はありますか?」

彼女は答えた。

「小さな変化に気づけるように毎日を過ごしたい」

僕は嬉しくなった。

 

 

 

日々の暮らしは時に辛い。しかし日常には小さな変化が溢れている。感情の風向き。気持ちの彩り。誰かの笑顔。苦みのある葛藤。その小さな変化と本気で向き合い続ける「勇気のおすそ分け」が今の僕にできることなのかもしれない。彼女からそう学んだ。

 

 

 

ナヴィーオ代表 山崎

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